概して患者さんは、薬が非常に好きな方と全く嫌いな方に大別できると思います。
ちょっとした症状があると、「先生、お薬いただけますか?」という方と、そこそこの症状があっても、「先生、お薬は副作用が怖いから飲みたくないです!」という感じですね。
どちらも良くないです。本来、薬というものは飲まないに越したことはないです。しかしながら、世の中にはどうしても薬が必要な病気あるいは病態があるのですね。その場合、薬を飲んだ方が飲まないよりもメリットがあり、副作用が起こる可能性よりも飲んだ方のメリットが大きいから飲むわけです。もし、飲まない方がメリットがあるばあいは飲むべきではありません。それと、その症状が薬を飲む必要のない場合や飲まなくても治る可能性が高かったり、薬が効かない病気や病態である場合などもありますね。そういったことを、医師が十分に説明しないから患者さんは不安になって、自分の感情に流され判断したり、医師ではない近くにいる人の無責任な意見に従ったり、果てはテレビや雑誌の情報を鵜呑みにしてしまったりします。こう言った情報は、同じ病名であっても個人差が大きい場合もありますし、同じ病名でも部位の違いや病変の大きさや病気の進行度合いなどにもよりますし、まして、診断がついてもないのに症状が似ているというだけで、素人の方が自分の病気とテレビでやっている病気が同じであると診断するのは大変危険ですね。
さて、本態性高血圧の場合には、降圧剤で治療することが多くなります。わざわざ”本態性”とつけたのは、”二次性”高血圧“は除くということです。降圧剤には、たくさんの種類がありますが主に次の5つに分類するとわかりやすいです。最近では、これらの薬のうち種類の違うものを2つ組み合わせた合剤といわれる薬も発売されています。
- カルシウム(Ca)拮抗薬=カルシウムブロッカー
- アンギオテンシンII受容体拮抗薬=ARB
- アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬
- 利尿薬
- β遮断薬=βブロッカー
- α遮断薬=αブロッカー
ポイントを押さえながら上記を1つずつわかりやすくご説明いたします。ただし、具体的な薬の名前はあえて記載いたしません。
カルシウムブロッカー
動脈が血圧に関係していることは、”高血圧の原因によってその対策や治療は異なる”のところですでに書きました。そして、動脈は内膜、中膜、外膜という3つの層構造をしていて、中膜は平滑筋という筋肉で出来ています。この筋肉が収縮したり拡張したりすることで血圧を調節しているのですが、この調節に関与しているのがカルシウム(Ca)になります。カルシウムが筋肉細胞の中に流入すると血管が収縮して血圧が上昇しますので、これをブロックしてしまうと血管が拡張して血圧が下がるというわけですね。
代表的な副作用:立ちくらみ、浮腫(体のむくみ)
アンギオテンシンII受容体拮抗薬=ARB
アンギオテンシIIは体内で作られる細い動脈を収縮させる作用のある物質で、この物質が血管平滑筋の受容体という部分に結合することで収縮が起こります。ARBは、この受容体に結合することによりアンギオテンシIIの作用を抑え、血管の収縮が抑制され血圧が下がります。
代表的な副作用:高カリウム血症
アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬
ACEは、アンギオテンシンIをアンギオテンシIIに変換する酵素です。この酵素の働きを阻害する薬になります。従って、血管収縮作用のあるアンギオテンシンIIの生成が抑制されるので血管の収縮が抑制され血圧が下がります。
代表的な副作用:から咳(痰が出ない咳)
利尿薬
字の如く、尿の排泄を促す作用のある薬です。同時にナトリウムの排泄も促します。循環血液中の水分が減ることにより血圧を下げます。
代表的な副作用:低ナトリウム血症、腎障害の悪化、糖尿病の悪化
βブロッカー
心臓にはβ受容体というアドレナリンの受容体があります。この受容体が刺激されると心臓の収縮力が増しますが、これがブロックされると心臓の収縮力が弱まり血圧が低下します。
代表的な副作用:徐脈(脈が遅くなること)、気管支喘息の悪化、糖尿病の悪化
αブロッカー
アドレナリン受容体のうちのもう1つにα受容体があります。そのうちのα1受容体は血管の収縮に関係した受容体でこれが刺激を受けると血管が収縮します。逆にブロックされると血管が拡張して血圧が下がります。
代表的な副作用:立ちくらみ
まとめ
結局、高血圧は無症状ですが、だからと言って放置すると、脳卒中や心臓疾患で或る日突然死亡したり、寝たきりになったり、後遺症で悩まされたりと良いことは1つもありません。日頃からきちんと血圧にも気を配って、少しでも基準値を超えるようであれば高血圧なのですからきちんと病院で医師と相談し、必要であれば薬を使用することも考慮してくださいね。