これからは、冬に向けて気温もどんどん下がってきます。それに、逆比例して血圧はどんどん上がる傾向があります。血圧は動脈にかかる圧です。寒くなると体から熱を奪われないように血管を収縮させて体温を保とうとする自律神経の働きがあります。従って、冬場は血圧が高くなりがちです。
正常血圧の人では、生理現象ですので特別問題にはなりませんが、高血圧の人にとっては重大な問題が起こることがあります。温度差によって生じる体の異常を”ヒートショック”と呼ぶことがあります。家庭内でも”ヒートショック”による死亡事故がかなりの数あることがわかっております。
例えば次のような場面です
- 暖かい風呂場から寒い脱衣所へ出た時、またはその逆
- 寝室から廊下に出て、トイレに行く時
- 暖かい室内から外出した時
- 暖かい部屋から寒い部屋へ移動した時
また、リスクが高い人は次のような方です
- 年齢65歳以上
- 動脈硬化の強い人:脳卒中、狭心症、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症(ASO)
- 肥満、メタボリックシンドロームの人
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症のある人
- 不整脈のある人
- 熱いお湯の好きな人
- 酒を飲んで入浴する人
- 長湯する人
- 隙間風の入る古い家に住んでいる人
- 早朝に散歩する習慣のある人
要するに、温度差がある場所と体に動脈硬化の強い人、治療のために薬を使っているような人は、大きなリスクを背負っているので常に気を使う必要があります。
冬場は、脳卒中や虚血性心疾患による死亡が多くなるのです。暖房費をケチってそのような病気を発症しますと、結局手術などになったり、ICUに長い間入ることになって高額医療費となってしまうのですね。その上、後遺症が残るともっと困りますね。
昔、こんなことが言われていました。”脳卒中で倒れたら、その場から動かすな!” で、本当に随分前に私が救急病院で本当に経験した笑えないお話しです。
70歳代の男性がトイレで倒れてしまいました。動かしたらいけない!と聞いていたので、丸々2日間そのトイレから動かさないで様子を見ていたというのです。まあ、少しの時間、あわてないで様子を見ることはしても良いと思いますが、患者さんを早く、適切な治療の出来る病院に搬送しなければ、治療が開始できません。最近よく”Time is Brain.”と言われるのですが、これは、「時は金なり。」にひかけた「時は脳なり。」というわけで、脳卒中は一刻を争うことを言ったものです。
”FAST” =「ファースト」=早く、という啓発用の言葉があります。
F:Face 顔
A:Arm 上肢
S:Speech 言語
T:Time 時間(迅速に)
というわけで、顔がゆがんでないか、片方の上肢が動かないか、言葉がうまく喋れないかのいずれか1つでも該当するようであれば約70%の確率で脳卒中を発症していると判断できるというものです。
本当に、これからの寒い時期は、高血圧のあなた!気をつけてくださいね。