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めまいと吐き気で救急車呼んだら高血圧だった!

エピソード:ある日の当直にて

それは、秋も深まり祭りが終わろうとしてるある日の当直のこと。その64歳の男性がやってきました。救急隊員は、「呂律難を訴える男性ですが、意識は清明で片麻痺もありません。受け入れお願いできますか?」

またかいな。”呂律難”って言うなよ、医療関係者なんやから、医学用語できちんと”構音障害”って言うんだよって教えたでしょ! とか思いながらも、『その呂律難っていつから起こったんですか? 何か既往歴は? 内服薬は飲んでますか?』と救急隊員に聞きますと、「先ほどから起こったそうですが、今は歩いて救急車に乗ってこられて、はっきりした呂律難はありません。」 『じゃあ、なんで救急車まで呼んだんでしょうね。』 もう全くらちがあきません。

本当にいつも思うんですが、救急隊も私がいつも教育しているつもりなのですが、レベルが低すぎる!もっと、勉強してほしい。 最近の医者もそうだけど、病気の主訴や現病歴、既往歴の効き方が甘過ぎる。だから、診断をしようとしても上手くいかない。いかないからすぐにCTやMRI検査に頼ろうとする。頼ってもほとんどの場合は、異常がない。そこで、またすごくいい加減な診断のまま、薬を対症療法的(症状にあっているだけのくすり)に処方する。そうすると、症状がきちんと治らないわけですよ。原因が明らかでないからうまく症状が取れませんよ。

実際にそのおっちゃんが救急車で運ばれてきたので、直接話を聞きます。        『そもそも、最初に起こった症状は何ですか?そしてそれは、何時から起こったのですか?』「夜中の12時45分ころ、トイレに座っていたんです。そのうちめまいがして、立ち上がるとふらふらとなるめまいが起こりますので、ほとんどその場から動けなくなったのです。そして、そのうち吐き気がして何度か嘔吐しました。それで、頭痛はないんだけど、脳出血でもおこしたのではないかと心配になり救急車を呼びました」 『なるほど、そのめまいは回転性のぐるぐる回るやつではなかったのですね。家は、お一人で住まれているのですか?』 「はい、結婚したことは、ありません。」 『それで、ますます心配になったわけですね。今の血圧は、180/103 mmHgと非常に高いのですが、普段から高血圧とか言われていませんか?また、体重が76kg で、身長が156cmということですが、ずいぶんな肥満体ですよ。会社の検診とかで言われていませんか? あとは、糖尿病とか脂質異常症とかは言われていませんか?』 「すでに、仕事をしていませんので、検査もしたことがありません。」

最近、時々おられますね。結婚せずに、一人暮らし。食生活も乱れてきて、生活のリズムもおかしくなっている人たちです。 高血圧は、本来症状がない”サイレントキラー”ですが、動脈硬化が進んでくると、めまい、肩こり、頭痛、吐き気などの症状が起こることもあります。この方も結局、頭部CT検査をしてはみましたが何の異常も認めませんでした。しかし、簡便に血糖値を測れる機器で、血糖値を検査してみると、なんと194mg/dlもありました。

『少し、家庭血圧をきちんと測定して、私の外来を再診してください。今日は、採血して、糖尿病、脂質、尿酸などを検査してみまよう。 あなたは、このままでは生活習慣病がどんどん悪化して今度は、本当に脳出血や脳梗塞などの病気で死んでしまいますよ。』

この方は、しばらく休まれて帰宅させました。 でも、血圧は確実に恒常的に高そうです。高血圧の診断をきちんとするためには、家庭血圧をきちんと測定して、それが 135/85mmHgを超えるようであれば高血圧と言えます。

さらに、生活習慣病の要素となる、脂質異常、糖尿病についても要検討です。このような方は非常に多くなっているように思います。若いときには血圧も低かったんだけどと言う人も多いのですが、加齢とともに血圧も上がっていく傾向あります。

高血圧は、最初のうちは無症状、やがて特徴のない症状、今回のような”めまい” ”吐き気”などを起こすようになり、さらに動脈硬化が進んで、脳卒中、狭心症・心筋梗塞(虚血性心疾患)へと進展していくのです。

悪いことは言いませんから、定期的な検査をお勧めいたします。

Dr HT:
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