外来で患者さんに、「アルコールは、飲んでも大丈夫でしょうか?」って聞かれることがよくあります。しかしながら、答えは簡単ではありません。なぜなら、功罪両方の面を持っているからです。そして、それはアルコールの量、飲む時間、飲んでからの時間、飲む人の体質、どのくらい永く飲んでいるかなど多くの要素が関係しているのです。心臓の動きを強めることも弱めることもありますし、血管に対しても収縮させたり拡張させたりします。
また、アルコールにはHDLコレステロール(善玉コレステロール)を増加させる良い働きもありますし、血液凝固系に作用して血液を固まりにくくする作用もあります。したがって、血管は詰まりにくくなりますが、脳出血などの出血の危険は高かくなります。
高血圧の原因となるアルコール
アルコールは、一時的には血管を拡張して血圧を下げますが、永年にわたって飲み続けると高血圧の原因になります。
研究の結果、アルコール摂取量が多ければ多いほど、血圧が上がっていくことがわかりました。では、1日にどのくらいの量飲むと血圧が上がるのでしょうか。おおよそですが、日本酒1合、ビール大瓶1本、ウイスキーシングル2杯、ワイン2杯、程度と言われています。これは、アルコールに換算すると、1日約30mlになります。
アルコール1日30mlあたり収縮期圧が、3mmHg上昇すると言われています。
これは、アルコールによって血管が収縮するだけでなく、交感神経に作用して心拍数も多くなりますし、アルコールのカロリーによって肥満になり、つまみをたくさん摂るようになると塩分摂取も増えるからでしょう。
まあ考えてみると、飲み屋さんにいって大勢でワイワイやってビール飲んでいると大瓶1本だけで終わるはずないですよね。まして、つまみもたくさん食べますし。。。これを、毎日のように家でやっているとろくなことはないよってことです。たまにであればまあ、問題はないと思います。要するに悪い習慣はつけないようにすべきですね。生活習慣病と言われれる所以は、こういうところから始まるのです。
アルコールの功罪
メリット(功)
- 日に30ml以下ならば、血圧を下げる
- 善玉コレステロールをあげる
- 血液を固まりにくくする(血管が詰まりにくくなる)
デメリット(罪)
- 毎日永い間飲み続けると、高血圧になる
- 不整脈(期外収縮や心房細動)を起こす
- 心肥大や心不全になる
- 脳出血やくも膜下出血のリスクになる
- がんのリスクも高くなる
- 肝障害、腎障害の原因になる
- アルコール依存症の原因になる