脳神経外科の場合には、その診察は「神経学的検査」と言ってちょっと内科の診察とは様相が違います。詳しくやっていると1冊の本が書けてしまいますので、簡単に説明しますね。
まず、患者さんの人としての印象、意識、顔貌、歩き方、しゃべり方、といった全体的なものを診ます。次に、脳神経を第1番から第12番まで、順番に検査して行きます。嗅神経、視神経、動眼神経、滑車神経、三叉神経、外転神経、顔面神経、聴神経、舌咽神経、迷走神経、副神経、舌下神経です。
そして、四肢の運動機能、感覚、小脳機能、歩行機能、深部反射や病的反射の有無などをてきぱきと順序立てて診て行くのです。だいたい、10分も有れば十分です。
この問診、診察でだいたいの診断が付くのが普通です。そして、必要が有れば、採血をしたり画像診断などの補助的診断を行います。
最近特に、問診を1分、診察は省略し、頭部CTやMRI検査をすぐにするダメ医者が増えているのではないかと私は憂慮しています。
それは、患者さんからこんな風に言われるからです。
「先生みたいに、ゆっくり話を聞いてもらって、丁寧に診察してもらったことはありません。」
って、ことはどんな医者にかかってきたんじゃ!
初めに、御断りしておきますが、全ての診療所や病院がそうであるとは言いませんが、一般的に
申し上げますと、外来にたくさんの患者さんがやってくる診療所(19床以下の入院ベッドを有する医療機関)や病院では、数をこなそうとしてどうしてもそうなるのかもしれません。そして、何千万円もの借金をして開業した診療所(クリニック)では、CTやMRIの購入費を回収するためにも検査をしまくるという悪循環におちいる傾向にあります。
ここで、2つめのウソを暴きます。
<ウソ2> CTやMRI検査は、どこの病院でやっても同じ画像である。
これについては、折にふれ私が脳外科についての講義をするたびに申し上げてきました。
ちょっと、考えてみて下さい。あなたが、店でハンドバックとか買い物する時にですよ、名も知れないメーカーの安いものとグッチやコーチとかの有名ブランドのものが同じ品質ですか?あり得ないですね。医療の世界も同じなんです。CTについてみると今の保険制度では検査料は、最も高級なCTだと9500円、最も安いと6000円です。MRIでは、その磁気の強さによって検査料が違います。3テスラ以上の高級機種では、14000円、1.5テスラ以上3テスラ未満の機種では、13000円それ以外では、9500円となります。問題は、画像に差がでるといいうことです。MRIで言いますと、1.5テスラ以上の上位機種ではまず問題はありませんが、それ以下の機種では、画像とくに脳血管を診るためにとるMRAという撮影方法に置いて、非常に画質が悪く疾患を見落としたり、見誤ったりといった問題を生じると言うことです。ハンドバックの場合と違って、この差異により、あなたの運命が変わることがあるということを、知っておいて損は無いはずです。
<ウソ3>MRI検査は、何度も受けると身体に悪い
どうも放射線被爆するCT検査と磁気で検査するMRI検査を混同しているようですね。
CT検査は、放射線を使用した検査ですから、たとえば、毎日毎日検査するようなことは、控えるべきです。しかし、MRI検査は、強力な磁気で検査いたしますので、通常の人であれば、毎日撮影したとしても何ら問題はありません。
さて、それでは、やっと本題の高血圧にまつわる事柄に入って行きましょう。