そもそも高血圧治療ガイドラインって?
”高血圧治療ガイドライン2014”の”刊行によせて”には、このように記載してあります。
現在、わが国の高血圧人口は、約4300万人と推定されています。高血圧は脳卒中、心臓病、腎臓病などの強力な原因疾患となります。したがって、『高血圧治療ガイドライン』は、頻度の高い高血圧に対して広く実地医家の先生方を中心に標準的な治療指針を提供することを目的としています。
ということですから、このガイドラインは、明らかに医師もためのものです。
ですから一般人、素人さんは読んでみてもなかなか理解しがたい内容が多いのですね。
目次を見てみましょう
高血圧測定と臨床評価
治療の基本方針
生活習慣の修正
降圧剤治療
臓器障害を合併する高血圧
他疾患を合併する高血圧
高齢者高血圧
認知症
女性の高血圧
小児の高血圧
特殊条件下高血圧
二次性高血圧
専門医への紹介・相談
文献
降圧剤一覧
降圧剤副作用リスト
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このようになっております。
しかし、よくよく調べておりますと、”日本高血圧学会”から以下のようなものがあるのを見つけました。
一般向け「高血圧治療ガイドライン」解説冊子
一般向け『高血圧治療ガイドライン』解説冊子 「高血圧の話」 電子版(998KB)
これの内容は、以下のようになってます。
まず序文には、以下の文章があります。
”高血圧は、日本では 4300万人というもっとも患者数の多い生活習慣病で、脳卒中、心 臓病、腎臓病などを予防するうえで重要です。そのためには、患者さん、ご家族の方々の 病気に対する理解も大切です。 このたび、日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会と認定NPO法人日本高 血圧協会、NPO法人ささえあい医療人権センター COMLが協働して「一般向け『高血圧 治療ガイドライン』解説冊子」を作成しました。高血圧とは何か、どうして恐いのか、予防 と治療について必要な知識などを、患者さんの立場からわかりやすく解説しています。本 冊子を参考にして、高血圧の予防と治療にお役立てください。”
そして次に、我々医師と患者さんのコミュニケーションというか、信頼関係を築くのに大切なことが書かれてありました。私も以前、”医師との上手な付き合い方”という演題で一般の方向けに講義をしたことがあります。外来では、なかなか時間が取れず、短い時間で患者さんに情報を提供するのに苦労することがあります。しかもこの冊子にあるような一般論だけで済ますのもダメで、目の前の患者さんにあった指導をする必要があるのです。
<新 医者にかかる10箇条 ─あなたが“いのちの主人公・からだの責任者”>
①伝えたいことはメモして準備
②対話の始まりはあいさつから
③よりよい関係づくりはあなたにも責任が
④自覚症状と病歴はあなたの伝える大切な情報
⑤これからの見通しを聞きましょう
⑥その後の変化も伝える努力を
⑦大事なことはメモをとって確認
⑧納得できないときは何度でも質問を
⑨医療にも不確実なことや限界がある
⑩治療方法を決めるのはあなたです
(NPO 法人ささえあい医療人権センター COML 作成)
そして目次は
高血圧とはどういう病気ですか?
どんな人がなりやすいのですか?
親も私も高血圧なので、子供も高血圧になるかどうか心配です
どのような症状がでるのですか?
どうやって診断するのですか?
家庭血圧測定はどうして必要なのですか?またどうやって測るのですか?
白衣高血圧とはなんですか?
家庭血圧は正常なのに、お医者さんは 降圧薬が必要だといいます。
どうすればよいのでしょうか?
仮面高血圧とはなんですか?
薬以外にどんな治療法がありますか?
血圧はどこまで下げたらよいのですか?
食塩制限は高血圧になってから行えばよいのですか?
薬による治療について教えてください
降圧薬の副作用について教えてください
薬を飲み忘れた時はどうすればいいのですか?
血圧の薬はやめることができますか?
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これは、わかりやすく説明されていて患者さんが高血圧を理解し、学ぶのにはいい資料です。
私も、この解説冊子と同様の目的でこのブログを書いております。
もっと高血圧の恐ろしさを強調して、発症したら人生が終わるのだということをしっかりと認識していただくために、これよりももっと良いものを目指してこれからも精進していきたいと思います。
エピソード:高血圧は発症したら人生が終わる
症例:50歳、女性
診断:脳幹部出血
BMIが、26以上ある肥満。自分では、健康には自信があり医者にはかかったこともなく、健康診断など受けたことすらなかった。ある日、自宅で家族と会話している途中に突然意識不明となり倒れこんだ。家族は、驚いて救急車を呼び私の病院へ搬送されてきた。
これまでに病院にもかかったことがないため、血圧、血糖値、脂質異常症などの有無も不明であるが、かなりの肥満があり、来院時の収縮期血圧は200mmHgを超えていた。確かに、脳圧も上がってはいるものの普段から相当血圧が高かったものと予想された。
その時の意識状態は、昏睡状態であり、四肢の動きは全く見られず、すでに両側の瞳孔は4mm程度で対光反射はなかった。
脳幹部出血であり、すでに意識状態も極めて悪く、瞳孔も固定し対光反射はないため、現在の医学ではどうすることもできず、脳浮腫を取る点滴を行い、ご家族の希望もあり、見守るだけとなった。
入院時頭部CT
数日間、なんとか自発呼吸が合ったものの、残念ながら死亡された。
このように、全く症状がなくても突然発症し、死に至るのが”脳卒中”です。
お分かりになったでしょうか!